★♪ひもの取れた黄色いぼうし★♪





ひもの取れた黄色いぼうし


 ピンクのさくらが満開の春です。川田花ちゃんは、良い子町の良い子小学校の一年生になりました。
 ある晴れた春の日、花ちゃんは、お父さん、お母さんといっしょに、元気に良い子小学校の入学式へ行きました。花ちゃんのクラスは、一年二組、担任の先生は、若い山下ゆかり先生でした。
 入学式も終り、一年二組の教室で、山下先生のお話を聞きました。

『最後に、良い子町から皆さんに、プレゼントがあります。プレゼントは、これです。』
『わ〜い!』
 それは、ピカピカの黄色い帽子でした。
『来週から、この帽子をかぶって元気に学校に来ましょうね!』
『は〜い!』

 2日後の月曜日から、新学期がスタートしました。花ちゃんも初めてランドセルを背負い、新しい黄色い帽子をかぶり、元気に良い子小学校へ登校してきました。
 一年生の初めての授業は、山下先生と、皆の自己紹介から始まり、あっという間に一日目の楽しい授業は、おわりました。そんな中、山下先生は、川田花ちゃんのお母さんの書いた連絡帳をじっと読んでいました。
 連絡帳には、こう書いてありました。
『先日、いただいた、黄色い帽子なんですが、すぐに、ひもが取れてしまいました。乱暴にあつかったわけでは、ありません。これから、長く使うものなので、新しいものと交換してもらえないでしょうか?』

 それから、4.5日たったころ、学校に新しい黄色い帽子がとどきました。帰り支度も終わった時でした。
『川田花さん、ちょっといらっしゃい・・・。新しい黄色い帽子が届いたわよ・・・良かったわね!』

 ところが、花ちゃんは、古い黄色帽子を抱きしめながら、
『先生!、私ね、この帽子がいいの。この帽子は、お父さんが直してくれたの。だから、花は、この帽子がいいの。先生、さようなら・・・』
と、にっこりすると、スキップしながら帰ってしまいました。


 それから、2、3日たったある日、山下先生は、川田花ちゃんのおかあさんの書いた連絡帳をじっと読んでいました。
連絡帳には、こう書いてありました。
『先日、お願いした黄色い帽子は、まだ、届かないのでしょうか?』

 山下先生も黄色い帽子のことは、すっかり忘れていたのでした。
「これは、いけない。お母さんに連絡するのを忘れていたわ・・・。」
 さっそく、山下先生は、川田さんのお宅に電話をするのでした。お母さんへの連絡を忘れたことをお詫びして、新しい、黄色い帽子を、花ちゃんに渡そうとしたこと、花ちゃんは、お父さんに直してもらった、黄色い帽子をとても喜んでいたことを話すのでした。
 しかし、お母さんは、こう言うのでした。
『親が、取り替えてほしいと言ったのだから、取り替えてください。子供なんかの言うことを信じるよりも、親の言うことを信じてください。』
『・・・分かりました。明日、花ちゃんに新しい帽子をお渡します。』

 翌日、新しい黄色い帽子は、花ちゃんのものとなるのでした。
 しかし、花ちゃんは、寂しそうに、こう言うのでした。
『先生、この古い帽子は、お父さんが直してくれたの、花は、とっても嬉しかったの。だから、こっちの帽子で、良かったのに・・・』



 それから、2・3週間たった頃の授業も終わった日のことでした。川田花ちゃんのおじいちゃんだという人が、学校にたずねて来たのです。そして、
『お母さんに赤ちゃんが生まれたので、花ちゃんを迎えにきました。』
 と言うのです。でも、山下先生は、おじいちゃんの顔を知りません。

『困ったわ、花ちゃん。こちらの方は、おじいちゃんに間違いありませんか?学校のお約束で、知らない人に花ちゃんを預けることは、できないのよ。』
『はい、おじいちゃんです。もうすぐ、お母さんに赤ちゃんが、生まれるの、生まれたら会いにいく約束なの!。』

『・・・分かったわ、花ちゃんがそう言うのなら間違いないわね! 花ちゃんを信じるわ、行ってらっしゃい!』
『先生、ありがとう!』
花ちゃんとおじいちゃんは、にっこりすると、スキップしながら帰って行くのでした。



まあまあ面白いので、次の童話に進む



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