★☆ ヒメツルソバの大繁殖は何を意味するのか? ★○
ヒメツルソバの大繁殖は何を意味するのか?
『わあ〜キレイネ!12月に、さくら草?』
『れんげ草じゃない?』
(12月に、さくら草も、れんげ草も咲きませんよ……)
鎌倉の円覚寺は、平日から中高年の元気なおばちゃん達の叫び声でかまびすしい。
ここ鎌倉は、歴史ファンが多いのは無論のこと。
加えて季節がら、赤や黄色に色づいた紅葉目当ての観光客で、朝からごった返している。
北鎌倉駅を降りると、目の前が円覚寺である。学生や外国人に混じり、その中でも特に異彩を放つのは、立派な一眼レフカメラを首から下げリュックを背負った中高年達のグループだ。
勿論おじちゃん達もいるのだが、終始、おばちゃん達に押されっぱなしで、その存在感はほとんど消えており、絶滅寸前の有り様だ。
そもそも”カメラ”と言えばインテリ男の小道具だったのは昔の話。
操作の簡単な一眼レフのデジタルカメラの登場により、本来機械音痴のはずのおばちゃん達が大増殖している。かつてオートマ車の出現により女性ドライバーが大増殖したように……。
今やおばちゃん達は、デジカメという新車に、その活路を見い出したようだ。長年の研ぎ澄まされたバイタリティーで、側溝に流れ行く落ち葉を覗き込み、石垣のコケはおろか、赤く色づいた蔦の葉一枚まで決して見逃しはしない。なかなか堂に入ったもので、時には、カメラを横にしたり、斜めにしたり、時には方膝を付き、時には腹這いになり…もうプロのカメラマンも思わず逃げ出しそうな勢いだ。頑張ってね! デジカメおばちゃん達!!

ここで問題提起したいのは、こうした『デジカメおばちゃんの中高年における生態系の撹乱』がテーマではない。
ヒメツルソバという植物をご存知だろうか?
ヒメツルソバは、ヒマラヤ原産のタデ科の外来種だ。ガーデニングブームにより 花壇の縁取りやグランドカバーに使われている。ヒマラヤが原産地と言うことは、寒冷、乾燥、岩だらけの荒地にも適応できるということなのだろう。この植物、最近家の近所に目立ち始めた。それも道路の脇のセットバック跡の砂利道、アスファルトやコンクリートのちょとした隙間にたくましく繁殖している。近所を散歩すると、
『ここにも在るよ、あっちにも…、あっここにも、いやあ…たくましいなあ!』
それもそのはず、ヒマラヤの原産地と比較したらどこも温暖、肥沃な土地の好条件であり、最適地と言うことなのだろう。おそらく、ヒマラヤでは、つつましく咲く普通の花だったのだろう…が、遠く日本にやって来て、爆発的にその活路を見出したのではないだろうか…?
この植物を微笑ましいと思ったのは、この時迄だった。
ヒメツルソバに対する想いが変わったのは、このヒメツルソバの大群落を、思わぬ所で発見した時からだった。12月の鎌倉、北鎌倉駅に程近い円覚寺の庭園や植え込みのあちらこちらで大増殖しているのを発見したのだ。
『純和風の円覚寺に外来種の取り合わせか…。』
それも、半端な数ではなく、大群落となっているのである。
『ちょっと、異常じゃないか?これって生態系に問題ありじゃないの?第2、第3の”西洋タンポポ”、”セイタカアワダチ草”、”西洋みつばち”になるんじゃないのかな…。これから日本全土に大繁殖して、在来種が絶滅していくのだろうか…?
誰が名づけたか知らないが、ヒメツルソバとは、一見可憐で日本人好みの名前に、心を許していて良いのだろうか? やさしい日本人は、ヒメツルソバの深い野望にまだ気づいていないのだろうか?』
これを自然の摂理と受け入れるべきなのか……いまだその答えを知らず。
…このヒメツルソバに想いをめぐらしているうちに、だんだんと、この花が、○○○○おばちゃんに見えてくるのだった。
『・・・ということは・・・オラは、デジカメおじちゃんかなあ・・・? そんな〜!!』
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