☆そうさ・・・!? おまえもだよ!★
ガキンチョファイルNo.2・・・「修学旅行事件」
これは、本当にあった、お話です。修学旅行は、京都でした。
当時、髭(ひげ)もまばらな、
にきびだらけの田舎育ちの純心無垢な少年は、
初めての京都旅行に、大いに胸をふくらませていたのでした。
夏休み前の6月頃だったと思いますが、あの日は、清水寺や金閣寺、けっこう暑い一日で、
一日中歩き回ったのかもう日も暮れた頃に、その日の宿にたどり着いたのでした。
その宿の名前はすっかり忘れてしまいましたが、
道路沿いのこじんまりとした木造の風情のある、
なにやら歴史の感じられる、いわゆる”古都の宿”だったのです。
食事も終わり風呂に入り、部屋に戻ると仲間どおし、大いに笑い大いにじゃれ合いながら、
トランプ遊びや枕投げ・・・・・
あっちの方では、誰だかわからないが、突然、
「あ〜! 障子やぶいちゃった〜!」の叫び声。
こっちの方では、友達を羽交い絞めにして、プロレスごっこ。
そのうちに、先生もやって来て、
「いいかげんにしろ! 早く、寝んかい!!!」と、一喝!
その他、お定まりの修学旅行のフルコースの儀式を全て済ませると、
いつしか、次々と睡魔に襲われると、やがてもぞもぞと、布団に潜り込んだのです。
私が寝た場所は、部屋の入り口近くの端っこで、
クラスメイトの剛志は、自分と反対側の窓際の端の方でした。
剛志は寝る前に、枕を抱いて、
「俺、ここにしよう!」
と、叫びながら柔道の前廻り受身よろしく、くるっと1回転しながら、
布団に飛び込んだのを見ていたので、覚えていたのでした。
そして、その日の深夜・・・草木も眠る丑三つ時、ついに、あの事件が起きたのです。
その夜は、なにやら蒸し暑く、布団に入ってもほんのりパラゾールの臭いが鼻をつく、し〜んと静まり返った夜だったのでした。
「う〜ん、体が重い・・・う〜ん、息苦しい・・・」
突然、私は、体が硬直して動かなくなってしまったのです。
・・・・あっ、これが、”か な し ば り”ってやつかなあ・・・・
しだいに、体中に汗がたらたら・・・・
ふと、耳をすませると、なにやらどこかで・・
「う〜ん、うう〜ん、う〜ん、」と、誰かのうめき声が聞こえるのです。
やっとのことで、その声の方に顔を向け目をやると、暗くてよくわからないのですが、
誰かが、ふとんの上に起き上がっているようなのです。
いや、ちがう!・・・・向きが前後反対だ!・・・・そうだ、誰かが、寝ているやつの上に馬乗りになっているのだ。
剛志だ! あそこは、剛志の場所だ!!
だんだん目もなれてくると・・・白い浴衣を着たその人は、布団の上にまたがって、寝ている剛志の顔をじっと覗き込んでいるのです。
誰だろう・・・、あいつ? ・・・ 変ないたずらしてるなあ〜・・・
やがて、その顔がゆっくりと、こちらを向いたのです。
それは、目のぎょろっとした・・・白髪のおじいさん・・・だったのでした。
「ギャッ・・・・・・・!」
声にもならない声を発して、またまた私は、ふとんをかぶって、固まってしまったのでした。
1〜2時間もたったでしょうか・・・、なんとか体も楽になると、となりの光一を”コツン・コツン”と、足で蹴ったのです。
と、目をこすりながら光一は、
「なに、するんだよ・・・・。」
「たいへんだ〜・・・出た!」
「なにが、出たんだ?・・・屁でも出たのか?・・・。」
私は、光一の腕をつかみ、わらにもすがる想いで、次のように訴えたのでした。
「幽霊だ、幽霊が出た! おじいさんの幽霊だ・・・・・!
剛志の上に馬乗りになってたんだ・・・・ぜったいに幽霊だ、間違いないよ・・・・!」
この、悲痛な訴えに、おいおい皆んなも起き出してきたのでした。
「幽霊だって?・・・ほんとかよ・・・・・!!」
「ほんとだよ・・・・・!!」
ふと見ると、剛志も布団の上に起き上がり、真っ青な顔で、じいっと、うつむいているのでした。
そして、剛志は、うつむきながら突然・・・こう言うのでした。
「実は・・・、俺も見たんだ・・・。 お前の布団の上に、白い浴衣をきた、
おばあさんが、乗ってるのを・・・・!」
「えっ! 俺の上に・も・か・よ?・・・・」
「そうさ・・・おまえもだよ・・・・!」
おもむろに、こちらに顔を向けた その剛志の顔は、目のぎょろっとした、
・・・あの、白髪のおじいさん・・・だったのでした。
「ギャー!!!・・・・・・・!」
「オッー! なんだよ〜、びっくりしたあ! 」
電気を消して、布団にもぐり込み、顔だけ寄せ合ったクラスメートが、5.6人。
それは、・・・それは・・・お定まりの高校の修学旅行の一コマだったのでした・・・。
THE END
おもしろかった? 意味わかった?
・・・次回作は、ただ今、構成中。 発表は、いつかそのうちね!
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